『主よ 一羽の鳩のために 須賀敦子詩集』(河出書房新社)

主よ 一羽の鳩のために 須賀敦子詩集 [ 須賀 敦子 ]
ローマ留学中の1959年。
30歳だったその1年間だけ、誰にも見せずひっそりと書かれたおよそ40篇の詩。
「四季」
桜のはなびらを
こう集めて
手にのせて そのうへに
あなたを ねかせよう。
五色浜の小石を
こうあつめて
手にのせて そのなかで
あなたを あそばせよう。
稲の穂のしづくを
こうあつめて
手に汲んで あなたを
浴(ゆあ)みさせよう。
山茶花に吹く木枯らしを
こうあつめて
手にとって その音を
あなたに きかせよう。
「固いものを刻んでいくことによって、本質だけを残す」
詩を訳す、その一方で自ら綴った言葉。
没後20年にして新たに出会う須賀文学。
静けさと強さ。