きくち ちき『とらのことらこ』(小学館)

とらのこ とらこ [ きくち ちき ]
小さな虎の子とらこは、何をやっても失敗ばかり。
「とらこ とらこ つかまえて」
小さくて弱々しかったとらこは、親虎の温かな声と眼差しに守られて、いつの間にか大きく成長していました。


子どもの育ちは嬉しい反面、わずかに生じる心の隙間。
大切な存在だからこそ、大きく羽ばたいてもらいたいけど、できることならずっとそばにいてほしい。このまま近くで見守っていたい。
とらこを見ていると、応援したくなる一方で、そんな心情が湧いてきます。
きっと作者のきくちちきさんも、そのような思いで描かれたんだろうなと、少しだけ切ない気持ちになりました。
柔らかな線と色彩、自由で伸びやかな姿。
ちきさんの数多くの作品の中で、個人的にはこれが一番好きかもしれません。
デザイン、装丁も素晴らしく、いつまでも触っていたくなるような本の作り。
心をぐっと掴まれました。
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ただいま高円寺では、きくちちきさんの展示が2つ開催中です。
・書肆サイコロ 『とらのことらこ』絵本原画展 4/1(日)まで
・えほんやるすばんばんするかいしゃ 個展「しろくろきいろ」4/15(日)まで