2018年09月25日

『新潮45』と、ひるねこBOOKSの1週間のこと

*こちらは備忘のためFacebookに投稿した文章を、そのまま転載したものです。



『新潮45』をめぐる騒動については皆さんご承知のことと思いますし、今さら本誌の内容に触れたくもありませんので詳細は割愛しますが、簡単に経緯を記しておきます。

先週発売された『新潮45』10月号の内容を受け、翌日、ひるねこBOOKSのTwitterアカウントで「当面の間、新潮社の新刊仕入れを見合わせる」旨を投稿しました。

いち早くそのような態度を表明したせいか、あっという間に拡散され、大変な反響がありました。
(9/25現在、9,900件のリツイート 17,500件のいいね)

本日までに、HuffPost、AbemaTV、朝日新聞、報道ステーション、めざましテレビ、羽鳥慎一モーニングショー、などから取材やコメント依頼など、問い合わせが続いています。
(毎日新聞にはいつの間にか店名入りで記事が掲載され、知人や友人から連絡が入りました。)

反響の大半は「賛成です」「支持します」「勇気をもらった」「こういう本屋で買いたい」などの賛同の声でしたが、残念ながら中には「言論弾圧につながる」「本屋による検閲だ」「貴方の本屋では絶対に本を買わない」といった批判や、「パヨク」だとか「炎上商法」だとかいう中傷のコメントがあったのも事実です。

翌日か翌々日には、和歌山の個人書店「本屋プラグ」も同様の意向を示し、朝日新聞などで報道されました。こちらも同じような展開となりましたが、その最中にプラグさんから直接お電話をいただき、お互いの状況などを話し、励まし合いました。

賛否の分かれる事だというのは理解していましたし、本当に正しい判断だったのか、それをわざわざ外部に言う必要があったのかどうかについては、今の時点でも正解を見つけられずにいます。

寄せられた非難の大部分、特にいわゆるネトウヨと思われる人たちからのクレームは論外だとしても、「新潮社で書いている他の作家には罪は無い」「ヘイト本を出している他の出版社についてはどうなのか」といった声は、真摯に受け止めねばならないと感じています。

ただ、やはりあの内容、マイノリティへの差別や無理解、人権を蹂躙し、犯罪を助長するかのような文章に対して、何の声も上げないことはできませんでした。開店して3年弱ですが、ここで黙っているようなら、これまでの時間、そして少しずつ築き上げてきたものは一体なんだったのか、自分の信条に対する裏切り、そしてお客様を含め関わってくださっている方々に対する背信ではないだろうか。そんな思いから、ひるねこBOOKSの日々を見てくださっている方々に向けて発信したのでした。

ツイートにも書きましたが、これは言うまでもなく、自分一人で仕入れを決められる規模の店であること、古書がメインで新刊は数十〜100冊程度を厳選していること、などから可能だったことです。

抗議をしたところで新潮社には何のダメージにもなりませんが、そういった表明をする本屋があってもいいと思いましたし、その声が、誰かに、何処かに届けば意味はあるのかなと考えてのことでした。

多くの書店員(現場のスタッフから店長、そして本部社員に至るまで)は、こういった本を売り場に置きたくないと思っても、様々な事情からそれを実行するのは難しいでしょうし、自分が決めたことで、他の書店に同調を求めるようなつもりは全くありません。そして一部で盛り上がっているような不買運動に繋げる意図も全くありませんでした。あくまで自分の心情、そして信条に基づいて、この店では「置きたくない」判断をしたというだけですし、センセーショナルに取り上げられたり、祭り上げられたりするのは本意ではありません。

先述した通り取材の依頼が続きましたが、このような理由でお断りしていますし、それはこれからも変わりません。

途中、新潮社社長の声明が出ましたが、そこには謝罪や出版の経緯、今後の対策などが見受けられず、日本を代表する老舗出版社として、どうこの問題を考えているのか、全く不明でした。

新潮社の本は個人的に好きな本が多いだけに、心から残念に思います。



今回の騒動を受けて、本屋が置く本、売る本について、ますます考えねばならないなと思いました。これだけ分断が進んでいる世の中において、本の形をした様々な主義主張をどのように扱うのか(ただ今回の『新潮45』については、そもそも悪意の塊であり、本だとも思っていませんが)、晒したくないものを隠すのか、あるいは出来る限り全て並べるのか。書店の規模や立地、売り上げ構成、そして理念、思想にもよるでしょう。いわゆるヘイト本を並べているからといって、その書店が失格という訳ではありませんし、それに対するカウンターが用意されているのであれば、それこそ書店である、という気もします。

ただやはり、そういった本を自分は置きたくないし、触りたくもない。魚屋が腐った魚を売らないのと同様、八百屋が産地の不明な野菜を遠ざけるのと同様、自店のお客様になっていただきたい方に、何を見せ、どう提供したいのか。本屋だってそれが出来るはずです。

他者への理解を育み、誰もが暮らしやすい社会を作る。そしてそれを平和に繋げてゆく。それこそが自分が本屋を営み、日々本を手渡している意味だと考えます。だからそれに反するような本は売らないし、それは言論弾圧でも排除でもなく、当然の矜持です。それが揺らいでしまったら、もう本屋である意味はない。ただ形としての「本」を売っているのでは無く、その先にある暮らし、そして未来を提供しているのだと思います。こうあってほしいと願う社会のかたち、人々の心。

わずか6坪ほどの小さな本屋が語るにはあまりにも大げさなものかもしれません。でもそれを信じて、明日からも本を届けていこうと思います。

最後に。
近くから遠くから、声をかけてくださった方々、そして見守ってくださった皆様、ありがとうございました。悩みは続きますが、信念は曲げずに頑張ろうと思います。



*追記:9/25夕方、『新潮45』休刊のニュースがありました。これを受け、当該ツイートは一旦削除しました。ただこれによって何かが変わる訳ではありません。なぜあのような文章が掲載されるに至ったのか、その意図はなんだったのか、新潮社には徹底した検証を望みます。
posted by ひるねこ at 00:00| Comment(0) | 日記 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
FX 商品価格に関しましては、リンクが作成された時点と現時点で情報が変更されている場合がございます。お買い物される際には、必ず商品ページの情報を確認いただきますようお願いいたします。また商品ページが削除された場合は、「最新の情報が表示できませんでした」と表示されます。