『仕事文脈 vol.16 特集:東京モヤモヤ2020』(タバブックス)

今年の夏、東京を脱出しようと考えていた。
「アンダーコントロール」という嘘から始まったTOKYOオリンピックは、多額の税金を注ぎ込み、死者を出し、人々の生活や昔ながらの風景を破壊し、様々な犠牲を生みながら着々と進んでいた。
そんな虚飾に満ちた都市にいることが耐えられなかった。
少なくとも利権に塗れたお祭り騒ぎが終わるまで、ここでは無いどこかに行きたかった。
ところが新型ウィルスの登場という、まさかの展開が訪れる。
移動は制限され、人との接触は避けざるを得ず、生きるために働くことや店を開けることすら許されない空気が蔓延した。
信頼できないデータ、威勢の良い掛け声、ひたすら繰り返される「お願い」。
そうしてまた、東京には別のモヤモヤが加わった。
目に見える衰退と後退、目には見えない感染のリスク。
既に綻びを見せ、限界を迎えつつあった市場経済や東京一極集中の弊害が、いよいよ明らかになってきた。
多くの人々が仕事を失い、廃業や倒産が続く。
明日が見えない日々の中、わたしたちは今日も生きて行かなければならない。
この街で暮らし、働くということ。