エリーザ・プリチェッリ・グエッラ 著、長野徹 訳
『紙の心』(岩波書店)

紙の心 (STAMP BOOKS) [ エリーザ・プリチェッリ・グエッラ ]
「あなたの最初の手紙を読んだときから好きだった」。
図書室の本に挟まれた一通の手紙。
顔も名前も知らないまま文通を続けるうち、互いに想いを募らせるふたり。
やがて自分たち10代の少年少女が暮らす「研究所」に隠された秘密に気付いて……。
全篇が手紙で成り立つ「書簡体文学」は、瑞々しさに溢れながらも、どこか暗い影を感じさせる。
次第に「秘密」が明らかになるにつれ、その影はハッキリと姿を現す。
これはある意味でのディストピア小説だ。
読書家の著者だけに、古今東西の様々な名作が登場し、この世界に深みを与えてくれる。
文字通り本の間に挟まれて、物語の中を飛び回って楽しみたい。
透明感のある装画はカシワイ氏。
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