稲垣美晴『フィンランド語は猫の言葉』
フィンランド語は猫の言葉
「ずっと前にはやった“激”という字を遅ればせながら使うとすれば、
私はさしずめ『激芬家』(ゲキフンカ、激しくフィンランドのことをやる人)
というようなところでしょうか」
この言葉の通り、著者の稲垣美晴さんの激しく、そして楽しい
フィンランド留学記です。
フィンランドの芸術に魅せられ、渡芬した著者。
でも文化は全然違うし、とにかく複雑なフィンランド語。
フィンランドで泣いたのは2回。
1度はあまりに寒くて。
もう1回は、言葉があまりに難しくて。
それなのに各地の方言の授業までとるからまた大変!
試験の科目数は多いし、どの試験をとってみても
勉強に1年間はかかりそう……。
にも関わらず優秀な成績をおさめるあたりはさすが!
としか言いようがありません。
具体的な表現方法や、発音、文法のこともしっかり書かれていて、
エッセイとして楽しみながらフィンランド語に親しめます。
また、フィンランドに興味のない人でも、一人の女性の留学記として
楽しく読み進めることができるでしょう。
何しろこの時代(1970年代)には、日本国内でフィンランドの情報を
手に入れるのは難しく、フィンランド語学習書もほとんど無かったとか。
そんな状態で現地に飛び込んでいった著者の行動力には、
驚くと同時に学ぶところが多いです。
フィンランドの人々の生活や文化が軽妙に語られていて、
今すぐ現地に旅立ちたくなる、そんな1冊です。
ちなみにタイトルの「猫の言葉」とは、
フィンランド語で相づちをうつときの「二ーン、ニーン」から。
猫と話している気がするそうです!
著者が帰国後に設立した「猫の言葉社」の『いつまでも大切なもの』
については下記に書いておりますので、よろしければご覧ください。
http://hirunekodou.seesaa.net/article/433236217.html