『きぼうのかんづめ』(ビーナイス)
きぼうのかんづめ
3月になりました。
ちょうど1週間後は、3月11日。
あの東日本大震災から間もなく5年を迎えます。
震災の翌年に刊行されたこちらの絵本は
実話をもとに描かれています。
主人公の「かんた」は小学一年生。
かんたの家は、石巻にある小さな缶詰工場です。
工場でつくられるサバ缶は「めちゃくちゃおいし」く、
東京の経堂にあるラーメン屋さんでは「サバ缶ラーメン」が名物に。
そんな暮らしが一変したのは、あの3.11でした。
押し寄せた津波が一瞬にして町を飲み込み、
大切な缶詰も土や泥に埋もれてしまいます。
工場は閉鎖のピンチに立たされました。
しかし経堂のラーメン屋さんが言った
「缶詰ってなあ、丈夫なんだぞ!絶対に中身は大丈夫だ!」
という一言が、工場を救います。
埋もれた缶詰を掘り出しては東京に運びこみ、
ラーメン屋さんの隣のガレージでは、常連さんが中心となって
缶詰を洗って洗って洗い続けます。
そしてその缶詰をつかったラーメンは
「きぼうの缶詰ラーメン」としてメディアにも取り上げられ、
連日の大行列!
まさに大勢の人の力があわさって、希望を生み出したのです。
「あの日、津波に流されずに残ったものがあった。
それは希望だった。」
この帯の言葉の通り、多くのものを失い、絶望の淵に立たされながらも
決してあきらめなかった人々の勇気や希望が、この缶詰と絵本に詰まっています。
5年を迎える今もなお、多くの方が困難を強いられています。
絶対に忘れてはならないあの日を、この物語とともに胸に刻みます。