こちらの2冊をご紹介します。(いずれも、ほるぷ出版)
◎『ぼくは くまのままで いたかったのに・・・・・・』

ぼくはくまのままでいたかったのに… [ Steiner,Jorg.(1930-) ]
森に住む一頭のくまが洞穴で冬眠を始めました。
ところが大変なことに、冬の間に人間たちがやってきて、森の中で工事を始めました。
春になって目を覚ましたくまが見たのは、跡形もなくなった森のあとに建った巨大な工場でした。
そこに現れたのは工場長。
「おい おまえ、とっとと しごとにつけ」
「あのう、すみませんが、ぼくは くまなんだけど……」
「くまだと!ふざけるな!うすぎたない なまけものめ!」
くまはヒゲを剃らされ、制服を着ると、他の労働者と同じようにタイム・レコーダーにカードを入れます。
そして来る日も来る日も、機会の前に立ち、ボタンを押すだけの仕事に従事します。
やがてクビになったくまは雪の中を凍えながら歩き、やがてモーテルにたどり着くものの泊めてもらえず、またひたすらに歩き続けました。そして森の洞穴の前で座り込みます。
「ああ、こんなに さむくさえなけりゃあなあ。ようく かんがえるんだ、これからさき どうしたらいいのかを……。」
そして長いこと座り込み、からだには冷たい雪が降り積もります。そして思うのです。
何か大事なことを忘れてしまったらしいな、はて、なんだろう?と。
◎『ふたつの島』
ふたつの島
海に浮かぶふたつの島がありました。
第3の島もあったという言い伝えがありますが、ある理由で沈んでしまったのだそうです。
大きい島には大きなからだのひとたちが暮らし、金持ちと貧乏人が、主人と奴隷がいました。
小さい島には小さなからだのひとたちが住み、歌ったり踊ったり、生きることをゆったりと楽しんでいました。
大きな島の王は、自分の島をもっと豊かにしようと、小さい島の石と土を奪います。
これまで心配事もなく暮らしていた小さい島の人たちは為すすべがありません。
島は日ごとさらに小さくなりました。
ある時、大きい島に金が出ます。王はもちろんのこと、大きい島の住人たちは金さがしの熱病にとりつかれ、見つけた金を家にかくし、他人を信用しなくなりました。
漁夫も大工も堤防工事の人夫も奴隷になって金を掘り続けた結果、段々畑は崩れ、穀物倉はからっぽに。
やがて雨の季節になると、坑道は水浸しになり、穴には泥があふれ、岩場では波が荒れ狂います。
そして嵐の日、地鳴りが響き渡り、山が崩れ落ちました。
嵐の海に逃れた彼らを助けたのは、奴隷にされ虐げられた、小さい島の人々。
彼らは仕返しをしようとはせず、自分たちの家に迎え入れ、そして協力して大きい島を、以前よりもっと豊かな島に変えたのです。
働くこと、生きることとはなにか?
自然とともにいきる社会とはどういうものか?
これからどういった世界をつくっていくのか?
私たちに問われていることは途轍もなく大きいです。
それでも希望のある世界を、未来をつくりたい。
いまできることは、それを思い描き、そのための一歩を踏み出すことです。