2018年03月04日

ノグチクミコ『ほんとうの空の下で』

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

ノグチクミコ『ほんとうの空の下で』

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電気紙芝居と呼ばれる「幻灯機」。戦後間もなく、自宅で子どもたちに向けた幻灯会を開いていた川本年茂さんは、60代で福島県浪江町の山里に移り住み、愛犬のシマと暮らしていました。

その暮らしは、ほぼ自給自足。水道は湧き水、薪を割って火を起こします。ご飯を食べて、お風呂に浸かって、眠る。桃源郷とさえ感じられる山里で、シマと一緒のそんな日々が続いていました。自然と一体となり、その恵みを享受する生活。終の住処はここだと決めていました。

そんな平穏な日常に、あの日がやってきます。
2011年3月11日。
東日本大震災、そしてそれに続く原発事故。
楽園は、自然の脅威、そして人間の愚かさの前に奪われてしまいました。

川本さんは避難所に移ることになりますが、シマを連れては行けません。水を洗面器いっぱいに張り、餌はありったけ撒き散らしました。数日後、おにぎりを持って帰宅すると、鎖を外したにも関わらず、シマはどこにも行かずに家の前で待っていました。それから、ふたりの避難生活が始まります。

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2012年に放送されたドキュメンタリーでこの物語を知ったノグチさんが、歳月をかけて絵本に仕上げました。

まるで川本さんの幻灯会のように、1コマ1コマが移り変り、その印象を強くします。文字がないことが却って物語を想起させ、その幸せや楽しさ、そして痛みや辛さを感じさせます。

震災そのものを描いたわけでも、直接何かを非難したりするものでもありません。しかし、だんだんと老いていくふたりの姿を見ていると、もしあのまま山里で暮らしていければ、どんなにか彼らは満ち足りていただろうかと思ってしまうのです。

あの日から間もなく7年。
今もまだ避難生活を続けている方々に心を寄せるのはもちろん、一つの「歴史的なニュース」としてしまわないために、何千何万という数字の前に思考を停止させないために、その裏には人それぞれの営みがあったのだという、そのことに思いを馳せることを忘れてはなりません。


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発行者:NOGUCHI PRESS
印刷製本:錦明印刷株式会社
1,800円

http://hiruneko.thebase.in/items/10131394
posted by ひるねこ at 19:08| Comment(0) | 紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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