2019年07月14日

『ちっちゃい こえ』(童心社)

東京・谷中の本屋ひるねこBOOKSです。

アーサー・ビナード 脚本
丸木俊、丸木位里 絵「原爆の図」より

紙芝居『ちっちゃい こえ』(童心社)



《アーサーさんが、「原爆の図」をもとにして紙芝居を作ろうとしている》

そんな話を聞いたのは、店主がまだ童心社に在籍していた頃、2012年か13年の頃だったでしょうか。

アーサー・ビナード氏については今さら説明するまでもありませんが、アメリカ生まれの詩人で、1990年の来日以来、長く日本に暮らしています。日本語での詩作や翻訳、絵本やエッセイなど幅広い活動で知られ、ラジオのパーソナリティーや各地での講演などでも活躍しています。

2013年に童心社から刊行された写真絵本『さがしています』は、アーサーさんが広島の平和記念資料館にある遺品たちと向き合い、その「カタリベ」の言葉を“翻訳”することで生まれました。

店主自身、営業担当者として様々な書店やメディアに働きかけをしたので、印象深い1冊でもあります。

そんなアーサーさんが、7年の歳月をかけて完成させたのが本作『ちっちゃい こえ』。

原爆投下直後の広島へ入った丸木俊・丸木位里の二人が、その光景と体験者の証言をもとに描いた「原爆の図」は、縦1.8メートル、横7.2メートルの作品が、あわせて15部。現在、埼玉の丸木美術館に所蔵されています。

何度も美術館に足を運び、全身で受け止める。書いては消し、演じては直す。試行錯誤の結果、ついに生み出された紙芝居からは、とても一言では言い表せない思いとエネルギーが発せられています。

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1945年8月6日。
あの日のヒロシマを、一匹のネコが語ります。
でもそれはネコが語っているようでいて、実はそうではない。
もっと深く、もっと小さなところから、その声は聞こえてくるようです。


ハトは 爆弾を おとさない。
ネコも 爆弾を おとさない。
いきものは みんな おとさない。
ニンゲンだけだな、
爆弾を つくって おとすのは。
どうしてだろう?
ニンゲンの からだだって ネコや
ハトと みんな おんなじ、みんな
サイボウで できているのに……。


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そうです。
わたしたちの身体は、小さな小さなサイボウで作られていて、そのレベルまで目を凝らせば、ニンゲンも動物も、そう違いはありません。
なのにニンゲンだけが、兵器を作り、爆弾を開発し、そうして他のニンゲン、いえ動物たちの命まで奪います。

高度に発達した知能を持ったはずのニンゲンは、地球上でもっとも愚かな生き物になってしまった。
残念なことに、それは決して言い過ぎではありません。

印象的な猫の眼差しは、まるで私たちを責めているようです。
その貫かれそうな強い視線から、私たちは目を逸らしてはいけません。
それと同時に、その目には哀れみと、ある種の願いを感じることもできます。
「もう2度と繰り返すなよ」という警告と、「お前たちにはできるだろ」という問いかけ。
もしかすると、1945年のヒロシマから、未来の世界を見つめているのかもしれません。

この作品を演じ終わった後、見終わった後、皆さんの心には何が残るでしょうか。

キノコ雲を遠くから眺める目線ではなく、その下に確かに存在した「生命」としての目。
その命の声が聞こえるでしょうか。

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折しも、参議院選挙が近づいてきました。
年金や消費税、社会保障など課題は山盛りですが、争点の1つとして「憲法」があります。

戦後、日本の「平和」を守ってきた憲法を変えるのか。
武器を作り、買い、運び、他国の利益のために誰かの命を奪うのか。
あの惨劇を、また繰り返すことを許すのか。

わたしたちの選択の結果は、1週間後に出ます。

どうか、大きな声ではなく、小さな声に耳をすませてください。
威勢の良い言葉ではなく、暮らしの微かな音、庶民のささやかな声を聞いてください。

もう、誰も悲しませないために。
ニンゲンも、動物も。

サイボウは、今日も元気に生きています。
そしてこれからも。
posted by ひるねこ at 18:06| Comment(0) | 紹介 | このブログの読者になる | 更新情報をチェックする
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