河野真太郎 編
『暗い世界 ウェールズ短編集』(堀之内出版)

ウェールズ文学と言われて、何を想像するだろうか。
そもそも具体的な作家や作品名を挙げることができる人が、日本にどれくらいいるだろう。
イギリスの「一地方」であり「国」「地域」とも言えるその場所に対し、明確なイメージを持っている人は、決して多くないはずだ。
ならば、文学を入り口にして、その場所の魅力を知り、学ぶのはどうだろうか。
ところが本書の編集方針は、ウェールズの歴史とその文学の歴史を、バランスよく過不足なく伝えることは「最初から放棄し」、普遍的な面白さを持っているものを選ぶ、というもの。
その意味でここに収録された5作品には、ウェールズ固有の何かがあるわけではない。あくまで私たちにとっても身近な話、共有され得る共感だ。
その一方で、それぞれの作品には、やはりウェールズという土地ならではの質感や香りが立ち現れる。
炭鉱、戦争、女性、日常。
ウェールズに根差した、5編の物語たち。
知らなかった、新しい世界。
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