ジョージナ・クリーグ 著、中山ゆかり 訳
『目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙』
(フィルムアート社 )

目の見えない私がヘレン・ケラーにつづる怒りと愛をこめた一方的な手紙 [ ジョージナ・クリーグ ]
〈私がこの本を書いたのは、ヘレン・ケラーという名の、私個人にとっての悪霊を追い払うためだ。〉
著者は視覚障害をもち、幼い頃からいつもヘレン・ケラーと比較されて育ってきた。
「なぜ、もっとちゃんと、ヘレン・ケラーのようにできないの?」
人々は常にこう言った。あるいは、そう言われているように感じられた。自分を幸運だと思いなさい。彼女は耳も聞えなかったのよ。決して不平などは言ったりしませんでしたよ、と。
そしてそれは自分だけではなく、他の障害をもつ人々にとっても、多くの害をもたらした。
「障害とは個人的な悲劇であり、したがって文化全体としての慣習や責任の負担を通じてよりもむしろ、個人の不屈の精神と勇気を通じて克服されるべきものだ」と。
不屈の精神の象徴として崇拝されるヘレン・ケラー。
だが彼女を、そのような偶像として崇められる事は、本当に正しいのだろうか?
著者は、ヘレンに関するあらゆる本やインタビュー、記事、その他の資料にあたり、その実人生を研究しつくしてきた。
そうしてある日、文通を始めた。もちろんヘレンから返事が戻ってくる事はない。あくまでも一方的な「対話」だ。
だがその過程で彼女の喜び、苦しみ、悩み、挫折などが浮かび上がり、「一人の盲目の女性」としての姿が現れてきた。
「奇跡の人」、あなたは何を思い、何を感じ、何を考えていたの?その笑顔の下には何を隠していたの?
神話の向こうにいる生身のヘレンに出会う。時間も空間もハンディも超えた魂の文通は、著者自身に、そして私たちに何をもたらすのだろうか。
圧倒的なリアルと迫力、痛快さ。
この本に出会えたことを感謝したい。
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