森まゆみ
『路上のポルトレ』(羽鳥書店)

路上のポルトレ 憶いだす人びと [ 森まゆみ ]
吉村昭、岸田衿子、種村季弘、瀬戸内寂聴……。
地域雑誌「谷中・根津・千駄木」で知られる著者が、これまでに出会った不思議な人、忘れ得ぬ人々を回想する。
作家、思想家、詩人、映画監督、芸人、そして市井に生きる人。その数およそ100人。
何年も何十年も前に生き、そして逝った人々が、記憶とともに鮮やかに蘇る。
すぐ傍の路に目をやれば、そのままの姿が立ち現れてくるようだ。
「人との接触を絶たれている毎日の中で、かつて出会った人とのことをなつかしく憶い出す。声も眼差しも口元の表情も背中も覚えている。(中略)憶い出だけで生きられる、とも思うし、もはや向こうの方が友達が多いかも、とこの世への執着が薄れかけたりする。」
ー〈おわりに〉より
この世で見たこと、感じたこと、会った人のことを次の世代に手渡したい。
文化とは、記憶の継承である。自分という存在は、上と下を結ぶただの環(リング)に過ぎない。
装画は谷中で育ち、学んだ画家、有元利夫。
出版社は千駄木にある羽鳥書店。
編集は不忍ブックストリートの代表であり、谷根千を知り尽くした南陀楼綾繁。
町のあちらこちらに散りばめられた記憶と歴史が、結晶となった。
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