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かこさとし『秋』(講談社)
ヒガンバナの行列に、風の中の赤トンボ。
うろこ雲が遠くまで続き、野原にはノギクが咲き乱れる。
秋は私の一番好きな季節。
ところが、その秋をとても嫌いになったときがありました。
それは今からずっとむかしの、昭和19年のことでした。
「日本だってアメリカだって、勝っても負けても、戦争では人が死に、傷つき、生活がめちゃめちゃになっていく」
「戦争をするだけのお金や物を、みんなの生活がよくなることに使ったら、ほんとうにたのしい世の中がつくれるだろうに」
「青い空や澄んだ秋晴れは、戦争のためにあるんじゃないんだ」
作者の長女である鈴木万里氏が、自宅を整理していて見つけた原稿を元に絵本化。
美しい自然描写。作者自身の体験。
どこか牧歌的な風景を描きながら、そこには大切な人を喪う悲しみや大きな憤りが込められています。
大好きな秋の美しさが続くように。
平和への願いと強い思い。
2021年08月06日
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