『花森安治の編集室』(晶文社)
花森安治の編集室
「稀代の天才編集者」
「戦後を代表するジャーナリスト」
「日本の暮らしを変えた男」
そして、「極めつけの頑固者」
……。
雑誌「暮しの手帖」初代編集長である花森安治を形容する言葉は尽きることがありません。
戦後のジャーナリズム史に輝かしい実績を残し、今なおその名が語り継がれる名編集者の姿を
同じ編集部に属していた著者が語る、花森安治の“伝記”であり“人物評”です。
面接でのやりとりから始まって、編集会議のことや花森の服装や言動、所作について、
「お当番さん」という社内の決まりのことや有名な「商品テスト」に関すること……。
これまでも花森安治に関する本や記事は読んできたのですが、
本書からは、同じ時間、空間を共有していた人物だからこそ感じられる、
花森安治の息遣いのようなものが伝わってきます。
常にまわりに怒鳴ってばかりいて、傍若無人。
頑固者で、他の意見を寄せ付けない独裁者。
そんな“鬼編集長”のイメージを持たれる花森安治ですが、
その根本にあるのは「日本の暮らしを良くしたい」という信念です。
そしてそのために、ジャーナリズムは、雑誌は、編集者はかくあるべき、
という意識、思想が彼を突き動かしていたのです。
二度と悲惨な戦争を繰り返さないために。
日々の暮らしを押しつぶされないために。
権力や大資本という、大きな力に抵抗し、
自分たちの力で自分たちの暮らしを守る。
それが花森の目指していたことではないでしょうか。
いま、私たちの暮らしを脅かされるような出来事が続いています。
政治であり、環境であり、食や住まいのこと、子育てや働き方のことなど様々で、
各人によってその問題意識は異なります。
折しも4月から始まるNHKの「朝の連続テレビ小説」は、「暮しの手帖」がテーマのようです。
今こそ、自分たちの暮らしに目を向ける時がきているように感じます。


